ホワイトカラーが生成AIで代替される未来が来たら?
生成AI起因のリストラが進む海外企業
先日、別の記事(下記)でも綴りましたが、生成AIの普及を受けて企業でのリストラが進んでいます。
現状、目立つのはマイクロソフトやSalesforce、アフラックといった海外企業で、エンジニア職や営業職など幅広い職種がリストラの対象となっているようです。
日本国内は独自の商慣習や解雇規制もあり、今のところ海外に比べればその動きは緩やかといえます。
先月には日産の大規模リストラが話題になりましたが、これは業績悪化を受けてコスト削減に迫られたことによるもので、生成AIの普及が直接的な要因ではなさそうです。
国内大手企業でも人員削減の流れは不可避
ただその一方で、例えばパナソニックは業績が堅調であるにもかかわらず、グループ全体で1万人の人員削減を発表しています。
マイクロソフトなどと同様に、今後のさらなる成長に向けて、ヒトの費用を減らしてAIやITなどへの投資を増やす戦略なのでしょう。
今後、このような動きをとる大手日本企業は着実に増えるものと見ています。パナソニックのように「攻め」のリストラもあれば、「守り」のリストラも当然増えてくるはずです。
リストラ加速で起こる連鎖反応とは?
そもそも国内経済がほぼ成長していない中では、多くの企業にとって、売上高の大幅伸長よりもコストの大幅カットを推し進めるほうが確実に利益を増やせます。
数千数万人規模の膨大な人員を抱える大企業ほど、リストラを見据えて生成AIで既存業務を代替していく、そのインセンティブが高いということになります。
私見にはなりますが、おそらく2027年くらいまでの間に、国内でも大企業を中心に、生成AIに後押しされた大規模リストラが一気に進むことでしょう。
すると、下記のような連鎖反応が起こる可能性があります。
- 優秀な大手企業出身者が転職市場にあふれる
中小企業にとって魅力的な、優秀で経験豊富な人材を採用できるチャンスが生まれる。 - しかし、そこで給与水準のミスマッチが起こる
大手出身者はどうしても前職水準の給与を期待する。しかし多くの中小企業にとって、大手企業と同水準の給与を支払うことは簡単ではない。 - 生活維持のために、多くの人材が副業を始める
転職によって給与が下がった人々は、生活維持のために副業で収入をカバーしようとする。結果として、副業市場が今以上に活発化。 - 副業・フリーランス市場で価格競争が激化する
供給者が急増することで、スキルや経験の価格競争が発生。企業側からすれば、現在よりも、専門的なスキルを持つ人材に安価で業務を依頼できる時代が来る可能性がある。
中小企業が「外部のプロ人材」を安価に活用できる時代へ
ここで、中小企業にとっての大きなチャンスが生まれます。
多くの中小企業では、生成AIの進化に興味はあっても、大手企業のように一気に導入・活用を進めるのは難易度が高いでしょう。
しかし一方で、競争が激化した副業・フリーランス市場の流れを受けて、優秀なプロフェッショナル人材を、安価で、必要な業務だけ外部委託できる機会が増える可能性が高くなります。
いま着手すべき、中小企業の「守り」と「攻め」の経営戦略
この未来を見越して、中小企業が今すぐ取り組むべきこと。
それは「業務の属人化をなくし、誰でも対応できる仕組みにしておくこと」です。
具体的には、次のステップが良いでしょう。
- 業務の体系化・マニュアル化
「あの人にしかできない仕事」をなくす。誰が担当しても一定の品質を実現できるように業務フローを見える化し、業務マニュアルを作って社内で共有する。 - 徹底した分業化
業務を細かく分解し、1つ1つのタスクを明確にしておく。こうすれば、特定の業務を外部に切り出して委託することも容易になる。 - 外部人材活用の準備
業務が外部へ切り出せる状態になっていれば、必要な時に、必要な部分だけを副業・フリーランス人材に安価で外注できる。また、特定の業務を生成AIに置き換えること検討しやすくなる。
人手不足と高齢化の備えにもなる
「人手不足」と「高齢化」は日本全体の課題ですが、とくに、採用難から人の循環が鈍くなりがちな中小企業では、従業員の高齢化は大きな課題となっています。
この問題への対応策として、上で述べた「脱属人化」「マニュアル化」「分業化」は、非常に有効な打ち手になると考えています。
社内の業務を見える化し、「あの人にしかできない」状態から脱しておく。業務を細かく切り分け、一部を外部の副業人材に柔軟に委託できる体制を整えておくこと。
来たる大リストラ時代を生き抜き、チャンスに変えるためにも、この備えは必要不可欠となるでしょう。
悲観的に、冷静に未来を見つめ、着実地道に備えて、楽観的に待つ。
私たち中小企業・零細企業は、このスタンスでこれからの激動の時代に向き合いたいものですね。
本日は以上となります。
株式会社FooLaiBo
三浦 隼