中小企業の「生成AIの始め方」
「生成AIと壁打ち」する経営者が増えている
日々、中小企業の経営者さんとお話ししていますが、私の周りの社長さんはすでに生成AIをバリバリ活用し始めている方が多いです。
ある社長さんは、2023年の夏頃からChatGPTを触っていて、今では経営の相談や新規事業の壁打ちなどをGPTと毎日のように行なっているとのこと。
もちろん、AIとの壁打ちだけで最終の実行案まで固めるのは簡単ではないので、私のような外部伴走者とも折々でディスカッションすることで実行にまで落とし込んでいくのですが、それにしても上流の思考作業はけっこうなところまで生成AIと社長さんで済ませられています。
一方で、生成AIに関するセミナーや勉強会などをやると、「まだ触ったことがない」「会社での導入の仕方がわからない」とおっしゃる社長さんにもお目にかかります。
この違いは何なのか、と考えてみました。
とりあえず触ってみる、が何より大切
前者のように「バリバリ使いこなしている社長」は、とにかくフットワークが軽いです。
仕組みや用途を完全に理解していなくても、とりあえず触ってみるかという”ノリ”で、さっと試している。その時点ではハッキリした効果がなくても気にしない。「ああ、今のところはこんな感じか。でも大体わかった」と、その時点の手触り感を大切にしているようです。
何事もそうですが、「最初に始める時」が大体いちばん面倒くさい。よくわからないサイトにアクセスして、アカウントを作成して、初めて見る画面で不慣れな操作をして……はっきり言ってストレスですよね。
逆に言えば、そこをクリアしてしまえば、その後は「ただ触っていく」だけでいいわけです。事務手続きっぽい作業は初回だけですから、あとはユーザとして”テキトーに”触り続けていれば嫌でも勘どころ活かしどころがわかってくる。
この「とりあえず始めちゃえば良い」の効能を理解できていない社長さんは、いつまで経っても、「セキュリティが」とか「うちの社員には使いこなせない」と言って、スタートを切らない。
2023年春頃にGPT-4を使い始めた社長と、2025年6月の今時点でまだAIを触ったことがない社長では、生成AIへの理解と業務活用の発想のレベルがちょっと想像しがたいほどの差になっているはずです。
生成AI導入は「小さく、軽く」が大前提
では、現時点でまだ生成AIを触ったことがない、あるいは使いこなせていない経営者はどうすればいいのか?
簡単です。今日からでもすぐ触ってみること。これだけです。この時点ではコンサルタントも専門システム会社も必要ありません。自分でアカウントを作って、無料版からでいいので、触ってみる。
ツールは代表的なものならどれでもいいでしょう。ChatGPTか、Geminiか、Claudeが一般的です。それぞれ、OpenAI社、Google社、Anthropic社(Amazonが出資)が開発元になります。
用途も、何からでも問題ありません。経営者なら常に「会社を今後どうしていくか?」という課題を抱えていますから、その点についての相談をしてみるのがやりやすいかもしれません。
「あまり具体情報は入れたくない」と思うなら、会社名や個人名、サービス名称など固有名詞は避けて、仮のA社として、前提や現状を打ち込んでいきましょう。
生成AIからの回答のスピードと精度、思考の柔軟性に驚くはずです。「下手なコンサルに相談するよりよっぽどまともじゃないか」と感じるかもしれません。無料版でも、すでに生成AIはそのレベルに到達しています。
俄然興味が出たら、有料版を契約しても良いでしょう。一般的なBtoBのSaaSツールと違って、どのツールも年間契約の縛りも基本ありませんし、しつこい営業電話がかかってくることもありません。支払いはクレジットカードでできますし、月極契約が主流なので、1ヶ月使って無料版に戻すこともできます。
こうやって1ヶ月2ヶ月と触っていれば、AIの活かしどころが掴めてきます。その段階で、用途の実例を交えながら幹部陣にも利用を推奨してみたり、あるいはITやガジェットに親和性のある若手メンバーに勧めてもいい。その際は、会社でアカウントを用意してあげると相手もスタートを切りやすいでしょう。
生成AIの進化・変化はとんでもなく速いので、現時点のツールや機能を前提とした綿密な長期計画はほとんど意味がありません。それらの前提は数ヶ月後には大きく変わっている可能性が高いためです。
ですから「どんどん変化していく」ことを前提として、何なら利用するAIツール自体も半期ごとに見直すくらいのスタンスで使っていくのが正しいと言えます。
変化を大前提のこととして受け入れつつ、生成AI時代の荒波をフットワーク軽く乗りこなしていきましょう。
本日は以上になります。
株式会社FooLaiBo
三浦 隼