読んでいる本の話
大数学者のエッセイ『春宵十話』
日曜日なので、いつものAIや営業の話はお休みということで。
いま読んでいる本が面白いので、それについて触れたいと思います。
岡潔(おか きよし)の『春宵十話(しゅんしょうじゅうわ)』という本です。
ビジネス書も好きですが、最近はもう少し、文芸というか先人のエッセイを好んで読んでいます。文体をはじめ全体的にのどかさに包まれていて、味わい深い心地よさがあります。
さて、岡潔という人は、世界的にも有名な数学者です。
私はまったくその分野は素人なのですが、どうやら、多変数複素関数論という領域で、それまで誰も解けなかった難問を一人で解いてしまうという大変な功績を残されたそう。
そんな偉大な数学者が、どんなエッセイを綴ったのか。ひょんなことから気になって、この本を取り寄せるに至りました。
読んでみて驚いたのは、全然、数学者らしくなかったこと。(数学者らしい、という表現もなんとも浅いイメージではありますが)
書き出しの一文が「人の中心は情緒である」。そして全編にわたって、この、情緒というものを考察する内容になっています。
もう少し噛み砕くと、(あくまで私の解釈ですが)、人間とは大自然との調和、それから本来備わっている直観、この二つの要素こそ重視すべきであって、数学をはじめとする論理うんぬんはさして重要ではない。
そのような主張に立脚して書かれていると感じます。
その功績からして「数学を極めた」といっても過言ではない大数学者が、人間の本質を情緒であると説き、自然との調和、直観の尊さを唱えている。
このギャップに、ちょっと大袈裟かもしれませんが、非常な衝撃を覚えました。
数学というのは、現代のこの情報化社会の基礎を担っている考え方だと思います。
例えば、現代のコンピュータの基本的な構成法とされているノイマン法は、ハンガリーの数学者ジョン・フォン・ノイマンによって考案されたといわれています。
パソコン、スマホ、果てはAIに至るまで、あらゆるコンピュータが浸透した現代社会の根底に、数学があるという考え方も飛躍ではないといえます。
そんなところもあって、数学というと極めて論理的、合理的、あるいはコンピュータ的なものという感じがします。
そんな、数学の分野で世界トップレベルに登り詰めた岡が、
「人の中心は情緒である」
と自著の書き出しで述べている。
未踏の世界の果てに行き着いた男が、そこで世界の真実を垣間見て戻ってきた……そんな場面をつい想像してしまいます。
すみません、結論はありません。つらつらと頭に浮かんだことを書きつけてしまいました。
もしちょっと興味が湧いたぞ、という方は、ぜひ岡潔の著書を手にとってみてください。(よければ感想をお聞かせください)
本日は以上になります。
漫筆閑談。