AIを使わない業務効率化:まず整えるのはファイルと台帳
生成AIのセミナーで登壇していると、こういう質問をよくいただきます。
「業務効率化を進めたいのですが、AIはどこから入れればいいですか」
実はこれ、お答えしにくい質問なんです。
というのも、お話を伺っていくと、AIを入れる前にやることがまだ残っているケースが多いからです。
業務改善は、AIありきで進めるものではない
当たり前のことですが、業務改善の目的は「AIを導入すること」ではないです。
いまうまく回っていない仕事を、回るようにすること。それだけなんですね。
ところが最近は、順番が逆になっている場面をよく見ます。
AIを入れることが先に決まっていて、そのあとで「どの業務に使おうか」を探している。
これだと、たいてい定着しません。
もともと困っていなかった業務にAIを入れても、誰も使わないから。
先に見るべきは、どこで詰まってるかです。
・同じ情報を何度も転記している
・誰かに聞かないと最新版が分からない
・ファイルがあちこちに散らばっている
・担当者が休むと止まる
こういう詰まりは、どの会社にもあります。
そして実際のところ、その多くはAIがなくても解消できます。
ExcelやGoogleスプレッドシートで、けっこう片づく
たとえばファイルの置き場所を決める。命名のルールを揃える。台帳を1つのシートに集約して、一箇所を見れば分かる状態にする。入力はフォームからにしてシートを直接触らせない。
これだけでも、かなりのことが片づきます。
お使いの環境がMicrosoft 365なら、SharePointやOneDriveにファイルをまとめて、入力はMicrosoft Formsから。
Google Workspaceなら、Googleドライブとスプレッドシート、入力はGoogleフォームから。
やることは同じです。
もう少し踏み込むなら、自動化する手もあります。定型の通知を飛ばす、決まった形式のシートを自動生成する、月次でデータをまとめる。ExcelならPower AutomateやVBA、GoogleならApps Scriptですね。
このあたりは、AIを使わなくてもできることです。
実際、私が支援しているある公益財団法人さんでは、結果としてAIを一度も使わないまま業務改善を進めています。
また、同じく支援中の製造卸の会社さんは、AIも活用していますが、Google Drive×スプレッドシート×AppsScriptだけでもかなりの効率化ができています。
どちらのケースでも、必要だったのは長年の属人化を解きほぐすことと、関係する方々の合意をつくること。
技術の問題ではなかったんですね。
もちろん、AIを使ったほうが早い場面もたくさんあります。
ただ、「AIでないとできないこと」と「AIがなくてもできること」を分けておくと、手をつける順番が変わってきます。
本題は、浮いた時間を何に使うか
ところで。
効率化は、それ自体が目的ではありませんよね。
空いた時間を何に使うかが決まっていないと、効率化した分だけ別の作業が入ってきて、結局何も変わらなかった、ということになります。
私が最近お伝えしているのは、
浮いた時間を、極端に人間臭い活動に投じましょう
ということ。
たとえば、お客さんのところに足を運ぶ。電話やメールで済むところを、あえて顔を出す。用事がなくても顔を出す。
効率という観点では最悪です。
でも、だからこそ競合はやらないんですね。
お一人お一人のお客様に、じっくり手をかけて接する。定型文で返せるところに一言添える。相手の状況を覚えておいて、次に会ったときにそのことに触れる。
これも効率は悪い。
悪いから、差がつきます。そんなことに時間をかける会社はほぼ無いので。
あるいは、未来のために準備する。顧客データベースを整える。過去の商談記録を残す。
すぐには成果になりませんが、需要が落ち着いたときに効いてきます。好調なうちにしか仕込めない仕事ですね。
効率化と、人間臭さの両立
私自身、AIはかなり使い倒しているほうだと思います。
資料のたたき台も、議事録の整理も、調べ物も、ほとんどAIに投げています。
一方で、営業のやり方はかなり古典的です。
商工会議所に飛び込みで行く。登壇したあとは、お礼にお伺いする。手土産を持っていく。ご担当者が異動したら、異動先に挨拶に行く。
このあたりは、いっさい効率化していません。
矛盾しているようですが、私はこの組み合わせが、これからの時代にはむしろ合理的だと考えています。
AIで誰でも同じことができるようになるほど、差がつくのは人間にしかできない部分です。
そして人間にしかできない部分というのは、たいてい効率が悪い。手間がかかって、時間がかかって、数字にもすぐ表れない。
だからこそ、そこに時間を割ける状態をつくる。その手段として、AIや効率化がある。
順番としては、こうだと思っています。
AIで効率を上げて、浮いた時間で泥くさく動く。
そんな会社が、これからは強いのではないでしょうか。
本日は以上になります。
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