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AIエージェントを中小企業で使うには|最初の仕事選びと「引き継ぎ」の準備

更新日時:2026.10.18
カテゴリー:Blog

セミナーでの質問が、変わってきた

先日、東京商工会議所 中央支部 青年部さんで、生成AIの実践講座をさせていただきました。

経営者の方々を中心に、約30名の方が参加してくださいました。

質問がたくさん出た、ありがたい会でした。

ただ。

その質問の中身が、少し前とは変わってきていたんです。

今回は、そこから考えた「AIエージェントを中小企業で使うには」について述べたいと思います。

先に結論を書くと、

AIエージェントに仕事を任せる準備は、新人に仕事を引き継ぐ準備に似ている。

ここを押さえておくと、何から始めればいいかが見えてくるのではないかと思っています。

「どのAIを使うか」から「どうつなぐか」へ

春ごろまで、セミナーでよく聞かれたのは、

・どのAIを使えばいいのか
・どんな業務に使えるのか
・有料版と無料版は何が違うのか

といった質問でした。

それが今回は、こんな質問が出ました。

・ChatGPTとClaudeのあいだで、データを共有できないか
・社外のデータベースに、AIからアクセスできないか

「AIに何を聞くか」だけでなく、「AIを会社のデータや仕事の流れに、どうつなぐか」へ。

関心が、一段先に進んでいると感じました。

こうした質問をきっかけに、私自身もSalesforceとの連携や、コネクター、MCPといった仕組みを、あらためて整理することになりました。

実は今回の講座では、難易度や時間配分を考え、AIエージェントの話を割愛していました。

ところが、当日の質問に加えて、アンケートにもAIエージェントについて詳しく知りたいという声がありました。

私が思っていた以上に、関心を持っている方がいらっしゃったんですね。

AIエージェントとは、仕事の担当を任せられるAI

あらためて、AIエージェントとは何か。

チャットでAIに一つずつ指示して、答えをもらう。
これは、すでに使っている方も多いと思います。

それに対してAIエージェントは、目的を伝えると、必要な手順や道具を選びながら、調べる・まとめる・資料にするといった一連の作業を進めてくれるものです。

一言でいえば、「作業を頼む」から「担当を任せる」へ。

もちろん、何でも丸投げできるわけではありません。使える情報や機能、任せてよい範囲によって、できることは変わります。

ChatGPTのdots(ドッツ)のように、会話していない間も調べものを進めてくれるものも出てきました。

ChatGPTの「dots」。AIに仕事の担当を任せる時代へ

ただ、機能が増えるほど、

「で、うちは何を任せればいいの?」

が分かりにくくなる。

ここで止まっている経営者の方も、いらっしゃるのではないでしょうか。

最初に任せるなら、毎週くり返す「集めて、まとめる」仕事

最初に候補にしたいのは、こういう仕事です。

・毎週か毎月、くり返し発生する
・あちこちから情報を集めて、一つにまとめている
・結果を人が確認しやすい
・最終判断は人がする

例えば、こんな依頼です。

「先週の問い合わせを一覧にして。返事が止まっているものには印をつけて」

「今月の見積の状況をまとめて。記録されている受注・失注・保留の区分で整理し、保留が長いものを教えて」

「来週の商談相手について調べて、前回のやり取りと合わせて一枚にまとめて」

どれも、人がやると地味に時間がかかります。

そして、忙しい週ほど後回しになる仕事です。

もちろん、この一言だけで、どのAIでもすぐにできるわけではありません。必要な情報を渡したり、対応するサービスとの連携を設定したりする準備は必要です。

一方で、見積金額を決める。納期を約束する。お客様へのメールを送信する。

最初の段階では、こうした判断や実行は人に残しておきます。

まとめるまではAI、決めるのは人。

この線を最初に引いておくと、試しやすいと思います。

いきなり「毎週やっておいて」と任せるのではなく、まずは一回分だけ。人が結果を確かめて、問題なければ、定期的に任せる方法を考えていく。

そのくらいの始め方で十分です。

AIエージェントに任せる前に、引き継ぎの準備をする

ここからが、今回いちばん書きたかったことです。

セミナーで出た「データを共有したい」「AIからアクセスさせたい」という質問。

コネクターやMCPは、AIと外部のデータや道具をつなぐための仕組みです。対応しているサービスや権限の範囲で、こうした連携ができるようになってきています。

ただ、業務改善の現場を見ていると、つなぐ以前のところで止まっていることが多いんです。

・最新の見積書が、どのフォルダにあるのか分からない
・顧客の情報が、担当者ごとのExcelに散らばっている
・変更の連絡は、口頭や電話で済ませている
・「あの件は○○さんに聞かないと分からない」が、社内にいくつもある

ところで。

新しく入った社員に、「これ、まとめておいて」と頼んだとします。

資料の場所が分からない。どれが最新版か分からない。経緯は前任者の頭の中にしかない。

これでは、どんなに優秀な人でも手が止まりますね。

AIエージェントに任せるときも、似たことが起きます。

なので、最初に整えたいのは、次のようなことです。

・その仕事では、どの情報を見ればよいかを決める
・何が最新版か、分かるようにする
・頭の中や口頭で済ませていることを、少しでも文字に残す
・何を、いつまでに、どんな形でまとめてほしいかを決める
・見てよい情報と、勝手に変更・送信してはいけないことを決める

要するに、引き継ぎ書が書ける状態にしておくことです。

例えば、問い合わせをまとめてもらうなら、

「この一覧を見て、会社名・問い合わせ内容・最終返信日をまとめてほしい。記録がなければ『不明』と書く。元のデータは変更しない。お客様への返信もしない」

ここまで言えれば、任せる仕事がずいぶん具体的になります。

社内の情報を全部、一つの場所へ引っ越す必要はありません。

まずは、今回任せたい一つの仕事について、必要な情報とルールをそろえる。

Google Workspaceでも、Microsoft 365でも、この考え方は変わりません。

そしてこれは、ツールの設定だけの話でもないんです。

書き残す時間がなかったり、何を残せばよいか決まっていなかったりする。そうした業務の進め方も、少しずつ整える必要があります。

だからこそ、いきなり全社でやろうとせず、一つの仕事から始めるのがいいと思っています。

地味ですが、ここが整っていないと、せっかくの機能も生かしにくい。

ファイルや台帳の整え方は、こちらに書きました。

AIを使わない業務効率化:まず整えるのはファイルと台帳

毎回AIエージェントを動かさなくてもいい

もう一つ、セミナーの準備をしながら整理できたことがあります。

私が普段お手伝いしている流れは、だいたいこうです。

  1. 業務を見える化する
  2. 小さく試す
  3. 仕組み化する
  4. 現場に定着させる

このうち3の仕組み化では、毎回AIを動かすとは限らないんです。

例えば、毎月同じ形式で集計する作業。

これは、AIにExcelの関数やGoogleのApps Scriptを書いてもらい、動作を確認したうえで、あとは普通の仕組みとして動かす方法もあります。

手順が決まっているなら、その都度AIに考えさせるより、結果を安定させやすい。変更があったときの修正や、異常がないかの確認は必要ですが。

・情報を読み比べたり、状況に応じて調べ方を変えたりする仕事は、AIエージェントを使う
・毎回同じ手順の仕事は、関数やプログラムなどで仕組みにする。その作成をAIに手伝ってもらう
・そもそも件数が少ない仕事は、無理に自動化しない

この使い分けが、中小企業では現実的なのではないかと思っています。

新しい機能が出るたびに、全部使う必要はありません。

目的は、AIエージェントを使うことではなく、仕事をよくすることなので。

「この業務にはAIは入れない」と決めることも、大事な判断です。

AI導入前に決めておきたいことは、こちらにもまとめています。

AI導入前にやるべきこと|48人で試して分かった、決めるべき3つのこと

AIに聞くだけでなく、AIに仕事を任せられる場面が増えてきました。

でも、任せる前に、まず引き継ぎの準備から。

毎週くり返している「集めて、まとめる」仕事を一つ選び、何を見て、どんな形にまとめて、どこで人に確認してほしいかを書いてみる。

最初の一歩は、そこからでいいと思います。

本日は以上になります。

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